神泉ではたらくベビースターラーメン。スマートフォンアプリを開発する株式会社ジェネシックス(genesix, Inc.)取締役。1981年生まれ。東京農工大学大学院修士課程卒。三沢光晴とB'zが好き。
Mail: tommygx90(at)gmail.com
Mobile と Design が世界を変える。
「偉大なる企業、リーダーには共通するパターンがある」
「勝てる戦略には共通のパターンは無いが、共通の論理がある」
「スタートアップが失敗しないためには、効果的な科学的なアプローチがある」
一度の成功なら時代の流れとタイミング、そして運などによってたまたまラッキーパンチが打てるかもしれない。ただし、成長し続ける事業、企業を創るためにはラッキーパンチではなく、自社のおかれた環境やその時々の文脈を踏まえた上で「勝ち続ける」ための戦略や、普遍的に有効な成功へのパターンを見つけ出し、成功への「再現性」「持続可能性」を高め続けていかなければならない。この「再現性」「持続可能性」が個人的にも目下の課題なのですが、それを生むための共通の考え方、パターン、プロセスを学ぶ過程において、ある種必然的に各種方法論における「共通点」を見出したりしています。
前述した3つのイシューは、ここ1〜2年に読んだ本の中でベスト10に入るとある3冊の本がそれぞれ解き明かして行く内容なのですが、租借するうちにこの3つの中に共通点があることに気づきました。それはまさに成長し続ける事業、企業を創るための「再現性」「持続可能性」を高める上で強力な考え方であると思います。今回はこの「成功則に共通する方法論」を実際の企業の事例を交えながらここにまとめておきたいと思います。かなりマニアックな内容ですが、もの好きな方は最後までお付き合いください。
先ずはその3冊を簡単に紹介します。
「偉大なる企業、リーダーには共通するパターンがある」
TEDの動画が有名なので、そちらをご覧になった方も多いと思います。ここで出てくる「ゴールデンサークル」というのがその共通するパターンをいとも簡単に説明する最強のツールなのですが、今回のエントリーにおいてもこの「ゴールデンサークル」がすべての軸となります。
ここで原田さんが強調するのが、マクドナルドにとってすべての土台となるのが「QSC (Quality, Service, Cleanliness)&メイドフォー・ユー」であり、就任後先ず最初に着手したのが基本に立ち返ってのサービスクオリティの向上でした。特にメイドフォー・ユーのシステムは、今までの作り置きでの提供を一切廃止し、注文を受けてからできたてを提供するというもので、何よりスゴいのが今ではその平均提供時間が50秒と、過去の作り置きの提供時間よりも短い時間で提供できるようになったそうです。こういった仕組みの改善による組織、プロセスの強みはまさにOCの戦略と言えるでしょう。また、このベースが無ければその上にあるバリュー戦略や新商品の戦略も全く無意味になものになるということです。実際マクドナルドをゴールデンサークルに当てはめると以下のようになります。
あくまで中心のWHYであるビジョンからすべてはスタートし、OC(QSC & メイドフォー・ユー)という他社には真似できない強みを土台としていかしながら、低価格で価格以上の価値を提供するバリュー戦略や徹底的に"マックらしさ"を追求した新商品戦略によって、結果として100円マックやビックアメリカなど一般消費者が知るアウトプットが出てくるという形です。このように"戦略ゴールデンサークル"を用いると正しい優先順位をシンプルに表現でき、戦略テンプレートとしてもコミュニケーションツールとしても汎用的に活用できるのではないでしょうか。
3.WHYを軸にピボットする
最後に、前述しました「リーンスタートアップ」における"戦略ゴールデンサークル"の適用を考えてみたいと思います。
仮説と検証を繰り返し、ユーザーにどう使ってもらいたいかではなく、ユーザーがどう使っているかをベースに方向転換(ピボット)するというのが「リーンスタートアップ」における方法論のハイライトならば、ここで"戦略ゴールデンサークル"は力を発揮するツールになると思います。実際、「リーンスタートアップ/エリック・リース」の中でも下記左図のようなピラミッドの概念が登場し、これはまさにゴールデンサークルに置き換えることができます。
ここで、WHYという軸足は変えずに、仮説と検証のプロセスによって戦略(HOW)と製品(WHAT)を方向転換するというのがリーンスタートアップにおけるピボットの方法論です。アントレプレナー、スタートアップにおいてそもそもの行動の源泉であるWHYはそう簡単に変わる(変える)ものではありません。
よって、もっと話を突っ込んで考えると、WHYを軸足にしつつも、特に戦略(HOW)の部分においてSPをどのように変えるか(戦略的にポジショニングを変えるか)、またはOCまでピボットすべきなのかを意思決定することが健全なピボットと言えるでしょう。また、本書ではあえて外部環境を踏まえた戦略的観点を含めずに自社のプロセスの改善のみにフォーカスしていますが、"戦略ゴールデンサークル"をピボットにおいても用いる事によってSPとOCを明確に区別した上での戦略性も検討することができるようになるでしょう。
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WHYから始めるゴールデンサークルというコンセプト、SPとOCという戦略論におけるシンプルなパターン分け、そしてスタートアップを死の谷から救い上げるピボットという方法論においてそれぞれ共通点を見出しました。成長し続ける事業、再現性、持続可能性がある企業をいかに創るかというのは恐らく永遠のテーマであり、また時代や環境の変化によって大きく変わってくるものだと思います。その中でも、少しでも普遍的で強力なコンセプトやプロセスを発見するために、日々実践と検証を愚直に繰り返しながらの企業努力を重ねていくしかないですね。
エンターテイメントにチェックインするアプリ「GetGlue」は既にご存知の方も多いと思いますが、実際日本でヘビーに使っているユーザーはほんのひと握りでしょう。GetGlueはニューヨークベースのスタートアップで、同じくニューヨークを拠点とするFoursquareが特定のロケーションに「チェックイン」→「インセンティブ(バッジ)」ループを発明したのに対して、それを「テレビ」「映画」「スポーツ」などのエンターテイメントに転用して「チェックイン」→「インセンティブ(ステッカー)」ループをうまくパッケージさせました。
2010年のスタート当初はエンターテイメントチェックインという切り口が注目され、またfacebookにおけるリアルな人間関係をベースとした「ソーシャルグラフ」という概念に対して、興味関心をベースにして構成される「インタレストグラフ」がよりビジネスへのつながりの深さから注目されていた時期であり、そういった実サービス云々よりも一つ上のレイヤーで注目されていた気がします。そして昨年4月にはユーザー数が100万人を突破し、TechCrunch Japanでそれが報じられたこともあって日本でもその前後ではいくらか話題になっていましたね。このあたりはLooopsの斉藤さんが「ソーシャルグラフの進化と新興サービスが取るべき戦略(2011.5.9)」にて、ソーシャルグラフとインタレストブラフ、それぞれのポジショニング戦略など絶妙な切り口で解説しているのでこちらを熟読されることをお勧めします。
GetGlueはそれからは大きく話題に上ることは無かったものの(特に日本においては)、昨年末から今年に入り再び大きな注目を集めているように思えます。また、少なからずビジネス上の実績は、そこらの"注目だけは一人前"のスタートアップよりも遥かに成功していると思われます。現在のユーザーベースは200万強。FoursquareやInstagramの1500万ユーザーという数字と比べると、決して多いとは言えないこのサービスに今注目が集まっている理由を次の3つにまとめました。また、ひとつ決定的な結論を先に述べるとすると、それは
「ソーシャルメディアをうまく活用したい各ブランドにとって、GetGlueはFacebook、Twitterという巨大ソーシャルプラットフォームでバズを起こす上でのアンプ(増幅器)の役割を果たしている」
からだと思います。
1.Activated Users
GetGlueはROMではないアクションを起こすユーザーを着実に集めています。昨年11月時点での単月チェックイン数は約2000万。Foursquareが恐らく月間8000万チェックインでユーザーベースは1500万程度なので、1ユーザーあたりのアクション数は確実にGetGlueの方が高いです。また、テレビや映画などよりビジネスへと結びつきやすい属性やデータを保有しているため、後述しますがかなりの数のメディアパートナーを抱えるまでになっています。※ただし、誤解の無いように書いておきますが、今のフェーズのGetGlueにとってこの点は重要ですが、中長期な視点で考えた時に今のFoursquareとの比較は記事の最後に引用した記事にある通りで、あまり意味をなしません。
2.Social TV
昨年から今年にかけて、USでは"Social TV"やそれをエンパワーするモバイルデバイスにおいて"Second Screen"とう概念がかなり盛り上がっています。実際"Social TV"を標榜するアプリはかなりの数が未だにリリースされ続けており、かつテレビ業界においても今年に入ってからの3つの大きなイベント「Super Bowl(スーパーボウル)」「Grammy Awards(グラミー賞)」「The Academy Awards(アカデミー賞」においてそのソーシャルメディアとのより深い統合/融合の動きと、実際のソーシャルメディア上での実績数値が確実なものとなってきました。残念ながら日本のメディアにおいてこの視点で記事になることはかなり少ないのですが(特にUSの盛り上りに比べると)、わずかな日本語ソースを貼っておきます。
>> ビックイベントはメディア総動員で楽しむ時代に、全米最大のスポーツイベント、スーパーボウルに見るテレビ中継・ストリーミング・SNSの相乗効果 by Daiamond Online
>> アカデミー賞もソーシャルメディアに注目 舞台裏やパーティーの様子をネット配信へ by The Wall Street Journal 日本語版
そんな数ある"Second Screen App"の中で圧倒的No.1のサービスとなっているのが他でもないGetGlueです。海外のメディアを見ていると、もはや"The Social TV Startup"と紹介されることも多く、アカデミー賞では170,000チェックインという一つの番組におけるチェックイン数の記録を更新しています。ビックTVイベントの度にリリースされるインフォグラフも、お馴染みになっててきました。
例えば先日のスーパーボウルにおいては、ビッグクライアントのPepsiとともに"定番ステッカーキャンペーン"を実施してビジネスとしての取り組みも数々成功させています。
3.via GetGlue
そういった"Social TV"におけるハブとしての役割を続ける中で、数多くのスポンサーシップを獲得しています。"ステッカーキャンペーン"のベースとなるスポンサーシップでのステッカーは現在680以上にのぼるそうです。これは以前のエントリー「InstagramとFoursquareはなぜ成功したのか?…」にも書いたニューヨークという地の利が活きている部分もあるでしょう。下記はGetGlueのHPに公開されている現在のメディアパートナーですが、ほぼ全部?って思ってしまうぐらいのコンプ感からその影響力の強さを感じます。
さて、ここでいう"影響力"とは何でしょうか?これが今GetGlueに注目すべき本質的な部分だと思います。各ブランドやメディア企業の立場に立ってみると、もはやソーシャルメディアを活用して消費者との関係をうまく"コミュニケーションデザイン"をしないと、今までのようにブランドの価値やメッセージを十分に消費者へ届けられないことを痛感していると思います。逆に一部の企業はソーシャルメディアを通じて得られた成功体験から、よりそういった感覚が高まっているというのも事実でしょう。そういったソーシャルメディアを通じて消費者との対話を実現する上で、現在不動のプラットフォームとなっているのが「Facebook」と「Twitter」であることは言うまでもないですね。いくらクロスメディアだと言って、CMでブロードリーチしつつ「続きはWebで」といってどれだけの人がそれぞれの点を線でつなぐことができているでしょうか。テレビをはじめとするマスメディアの力はブロードリーチという点は未だに健在ですが、情報がより人を介して伝播するソーシャルWebの時代においては「続きはWebで」みたいなやり方では導線は分断されています。その上で重要な媒介となるのがソーシャルメディアであり、よりシームレスに点と点をつなぐ作用を促進しているのがスマートフォン(モバイルデバイス)ということになります。
さて、昨年のad:Tech San fransiscoでの講演資料(Pepsi × X Factorのタイアップ事例)がSlideShareに上がっていますが、こちらで印象に残ったスライドがあります。
また、先ほどのアカデミー賞のインフォグラフでも、チェックイン数と同様にアピールしているKPIに6000万という数字がありますが、これは"TwitterとFacebookへのリーチ数"です。チェックインと同等に注力している指標がこちらということになります。つまりGetGlueとしては自社サービス内でのインタレストグラフ構築よりも、Twitter & Facebooという巨大ソーシャルメディアプラットフォーム上でのモジュールとして、いかにそのプラットフォームへの影響力を高めるか、ユーザーの入り口を取りにいくかという部分に注力していることが伺えます。そして、その"影響力"は各ブランドやメディア企業の立場から見た時にその本当の価値がわかることになります。彼らは自社単独でソーシャルメディア&Webの展開をするよりも、数字からも分かる通りGetGlueを通じて展開した方がより多くのバズをFacebookとTwitter上で起こすことができます(もちろん例外もありますが)。つまり、GetGlueはスポンサーにとってソーシャルメディア戦略上のアンプ(増幅器)となっていると考えられます。さらにここでもうひとつ大事なことがあります。それは、GetGlueを通すことによって、facebookページやTwitteの公式アカウントなど、ブランドからの広告めいた直接のメッセージではなく、友人やファロワーからのチェックイン、ステッカー通知という"身近な人たちからのフィード情報"として流れてくる点です。これにより、GetGlueを媒介にすることによって量だけではなく"質"も担保された形でソーシャルメディアへアプローチできるようになります。こうして現在、GetGlueはソーシャルメディアを通じて効率よく消費者とのコミュニケーションを図りたいブランドやメディアにとって最強のアンプとして注目が集まっているのだと思います。
現在はFacebookとTwitter上のモジュールとしてうまくワークしているGetGlueですが、今後は自身もインタレストグラフのプラットフォーマーとしてより広い層を獲得していくと思います。要はこの記事に書いてあるような世界観、といえば分かりやすいでしょう。やはり一歩先をいくのはFoursquareですね。ちなみにGetGlueのCEO、Alex IskoldはVentureBeatのインタビューで、2012年は"Personalizing the entertainment guide for the users"を目指すと語っており、よりユーザーの体験をベースとしたエンタメリコメンドサービスとしてより大きなプラットフォームと成る行く末を、見守っていきたいと思います。
あまりに鳥肌が立って感動した動画があったのでここに書きたくなりました。これはfacebookでシェアされてたまたま観たものなんですが、直近興味がある分野に最終的にリンクしたのでそれも含めて面白い体験でした。
先ずはこの6分47秒の動画をご覧ください。鳥肌が立たなかったらすいません。
こちらの動画は「THE X FACTOR」というアメリカで放送中の大人気オーディション番組の最終ライブパフォーマンスの映像。その後実際に2011年度のWinnerとなったMelanie Amaroの最高のパフォーマンスです。
さて、私はこの短い動画でとても感動してしまったわけですが、サービスの作り手としてなぜこの動画でこんなにも鳥肌が立ったかを考えてみたくなりました。彼女の歌自体が素晴らしいからというのはもちろんなのですが、それ以外に見逃せない文脈や感動するコンテンツ作りにおける鉄則が見え隠れします。そして、そこから「ソーシャル時代における共有されやすいコンテンツ」のポイントも見い出せる気がします。そこでざっと思い当たるところを4つまとめてみました。
Gap/振り幅
「片方のヒレが無いカクレクマノミ」「子供に飽きられてしまった古いおもちゃ」など何らかのハンディキャップを背負った主人公が最後は超絶ハッピーエンドになるという、マイナスからプラスへの振り幅を利用するのはディズニー映画の鉄則ですが、この動画にもその振り幅の鉄則がちりばめられています。
・決してスタイルも良くなく、いわゆる美人とは言えないAmaroが、大観衆のステージに立ってひとたび歌いだせば、そこから放たれる圧倒的な声量と美しい声で観客を魅了するという振り幅
・一見機難しそうな4人の審査員が、Amaroの歌に徐々に心動かされ、最後はスタンディングオーベーションで大絶賛するという振り幅
・明らかに田舎から出てきた風な若い少女の味方は家族のみ。ただ、観衆が徐々に味方に付き、歓喜し、最後は全員がスタンディングでたたえるという振り幅
などなど。これでもか!というぐらいの振り幅の連続ですね。4人の審査員がそれぞれのタイミングで徐々にAmaroの歌声に感動してく様が4者4様で素晴らしいのも肝です。どこまでが演出かは知りませんが、うますぎる。
Family/家族愛
最初の1分間で「Amaroは家族が大好き」「家族もAmaroが大好き」「Amaroの大舞台に家族は心配で心配でたまらない」という"家族の絆"感が素晴らしい前フリになっています。その後のステージのシーンで一気に
「Amaroとそれを支える家族」
VS
「4人の審査員とその後方にいる大観衆」
という構図が現れます。これはもう、刀1本で鉄砲隊や弓矢を持った何千、何万という敵に立ち向かうサムライを応援する気持ちになります。大観衆が歩兵大群、4人の審査員が四天王の大ボスということですね。歩兵をバッサバッサとなぎ倒し、最後には四天王も一刀両断という最高のエンディングを迎えれば感動しないわけがありません。
Music/音楽の力
何よりも、Amaroの歌声が素晴らしい。これはもう説明しようが無いのですが、それ以外で音楽の力を感じるポイントがあります。それは効果的な「間」の使い方です。Amaroが歌いだす直前と、最後に審査員が「OK, Miami. Help me here!」と言ったあとの観衆の大歓声で効果的に"音のタメ"を使っていますね。一瞬のタメは、一気に映像に没入させる力を持っています。約6分の動画でこれだけこの世界に入り込めるのは、こういった音の使い方も効いているのだと思います。
Reality/実話である
最近facebookをながめているとやたらと「感動ネタ」がシェアされてきます。誰かが投稿した写真、誰かが人づてに聞いた話など。どれもだいたい30秒〜1分もあればそれらの"コンテンツ"を消費できるのですが、確かに結構感動したりもする訳です。ひとつの要因としては、それらがすべて「本当の話」だからです。もしかしたらねつ造されたものもあったかもしれませんが、あくまで共有されたほうとしては本当の話として見るので、それが心に1歩も2歩も踏み込んでくる要因なのだと思います。これはfacebookというソーシャルネットワークの特性でもありますね。
最後に。
もちろんこのMelanie Amaroのサクセスストーリーには続きがあり、メジャーデビューなどをしてしまうわけですが、先日行われた世界で最も高価なCM枠でも有名である「Super Bowl」のPepsiのCMに、あのエルトンジョンと競演する形で出演していました。こちらも良い"動画"なので最後に是非ご覧ください。あか抜けたAmaroちゃんにも注目(笑)
みなさんは世界でいちばん高価な広告枠と聴いてピンときますでしょうか?
広告業界に詳しい人や感のいい人は即答できると思いますが、アメリカ人が最も好きなスポーツ、アメリカンフットボールリーグ「NFL」のチャンピオンを決める一戦、「スーパーボウル」のCM枠がその答えのようです。30秒のそのCM枠、リーマンショックによって一時は販売不振や値引きなどがあったようですが一転V字回復し、今年の平均放送権料はなんと史上最高の$350万(約2億2700万円)に達したとのこと。放送料の記録更新が話題になったり、実際約1億人がスーパーボウルを視聴するなどのスケール感もあってか、毎年価格が上がり続けています。ただし、昨今の放送料高騰の背景には、どうやらソーシャルメディアの台頭が大きく寄与しているようなのです。
最も有名なスーパーボウルのCM "1984"
こういった高騰の背景は知らなくても、このCMは知っている!という方は多いでしょうね。言わずと知れた1984年に発売されたAppleの「Macintosh」のCM、"1984"。IBMという巨人に立ち向かうAppleという構図をセンセーショナルに表現して話題を集めましたが、それだけこのスーパーボウルというのがアメリカ国民にとって特別であり注目が集まる祭典ということです。これが契機となりAppleは一躍注目を集めたという逸話が残るくらい、このスーパーボウルのCM枠に様々な伝統と価値がある訳ですね。
2011年に最も注目を集めたCM "The Force"
まさにこのパパ層にぴったりハマる、最高に心暖まるフォルクスワーゲンのこのCMは、2011年カンヌ広告祭の受賞作品にもなっています。ただし、内容よりも評論家の評価よりも注目すべきなのがyoutubeの再生回数で、現在なんと約5000万回。ここに、今ソーシャルメディアに注目が集まる要因があります。昨年のスーパーボウルから約1年がたっていますが、こうやって紹介されることによってまたfacebookやtwitterなどのソーシャルメディアによってこの"広告"が広がり続けています。
>> VW's "The Force" Super Bowl Ad Goes Viral
つまり今まではその伝統と瞬間最大風速に注目が集まっていましたが、今はCMを打ってからのソーシャルメディア上の広がりというのがこの30秒枠の価値を押し上げています。良いコンテンツはソーシャルメディア上の口コミによって長く大きく広がっていくことを考えると、今のスーパーボウル枠の役割は拡散への大きなキッカケづくりということでしょうか。
ちなみに、フォルクスワーゲン昨年の流れを受けて今年の新作はこちら。
2012年、さらに進化する"ソーシャル"を活用した取り組み
そういった背景を受けて、今年はソーシャルメディアやスマートフォンアプリを活用したよりインタラクティブな仕掛けがいくつも予定されています。コカコーラは専用Webサイトを用意し、CMに登場するキャラクターと連動する形でfacebook、twitterを活用してユーザーと対話するコンテンツを用意しているそうです。
中でも注目なのが打倒コカコーラのペプシコによるCM。どうやらあのスマートフォンアプリ「Shazam」を用いてインタラクティブなキャンペーンを実施するそうです(Shazamは現在1億7500万ダウンロードを記録しているそう)。具体的には、人気オーディション番組「Xファクター」の優勝者がCMの楽曲として使用され、それをShazamで音声をスキャンすると特設ページにアクセス、そのパフォーマンス動画をダウンロードできるという仕掛け。実はこちらの記事(from Mashable)にもある通り、Shazamはすでに同様なキャンペーンでの実績があって今回スーパーボウルという晴れ舞台をゲットした模様です。また、メディアチェックインという概念では今年大きくブレイクしそうなGetGlueもチェックインキャンペーンを実施する模様、こちらも楽しみ。
消費者調査の結果、今年は約60%の視聴者がスマートフォンやタブレットなど、"セカンドスクリーン"を活用しながらスーパーボウルを楽しむとのデータもあるみたいです。さすが、こちらは本当に進んでいる。伝統のスーパーボウルのCM枠に、こういったソーシャルメディアやスマートフォンアプリ、そしてセカンドスクリーンのような概念が登場していることに、大きな期待と希望を感じずにはいられません。ただし、こういったソーシャルメディアや新しい技術を活用する上で、どこまでいっても大事なのは「伝えたいメッセージや目的が何なのか?」という点であり、"30秒の映像作品"というキラーコンテンツであり、ソーシャルメディアそれ自体が何か魔法を持っているわけではないという点は忘れてはいけませんね。
今年のスーパーボウルは2月5日。とは言えソーシャルメディアやスマートフォンアプリが実際どのような実績を残せるか、非常に楽しみです。良いネタがあればまたSymsonicでレポートします。
最後に、既に話題になっている今回放映予定のAudiのCM。ちなみに私はこのCMをPiterestで知りました。こういった新たなサービスが、2012年コンテンツの"ソーシャルメディアドライブ"を加速させますね。
思い起こせば2005年、圧倒的な影響力を誇るマスメディアの「テレビ」と新興産業の「インターネット」の融合に急速に注目が集まったのが当時のライブドア代表、堀江さんによるニッポン放送株大量取得でした。その後の末路は皆様もよくご存知の通り。以来楽天によるTBSへのアプローチも結局は失敗に終わり、未だに「放送と通信の融合」によるメディア革命と呼べるものは存在していないのが現状です。こういった背景もあってか、特にインターネット業界において「×テレビ」への取り組みに興味を持っている人は、今は少ないような気がしてます。そもそもテレビを日常的に観ている人は、この業界には少ないのも事実ですね。
ただし、テレビにおけるインターネットの活用で先行するアメリカに目を向けてみると、特に昨年は「ソーシャルテレビ元年」といって良いほどインターネット(Facebook・Twitterなどのソーシャルメディアやオンデマンド配信)を活用した番組作りやサービスが話題となりました。詳細は後述しますが、デバイスにおいても「スマートテレビ」という概念のもと、2012年はインターネットによって「テレビ」というものがようやく大きく動きはじめています。そして、環境や文化は違えど、日本においてもいよいよテレビというオールドメディアが、インターネットの活用に本当の意味で大きく動き出す年になるのではなないかとも思います。
そこで、そういった海外の事例を踏まえつつ、特に日本における「放送と通信の融合」の今後に関してまとめてみました。こちらをまとめるにあたり、元Google日本法人代表の村上さんが推奨する"4つのレイヤー構造"にて考えてみたいと思います。はじめにお断りを入れておきますが、本エントリーは頭の整理が90%ぐらいの目的なので、文章は長いしネタ的にもBlog向きではありません。あしからず。
ハード/デバイスレイヤー
《2012年》
いわゆる「スマートテレビ」という呼び方で、良くも悪くも今一番話題になっているのがこのハード/デバイスレイヤーです。念のため、「スマートテレビ」とは"フィーチャーフォン"が"スマートフォン"に進化したように、インターネットの活用やユーザーインターフェースの革新によって多種多様なコンテンツやサービスをより能動的に楽しめるテレビのことを指しています。先日ラスベガスで開催されていたCES(Consumer Electronics Show)のレポートからも分かる通り、SamsungやLGなどの韓国勢やSony、Panasonicなどの日本の主要メーカーもこぞって新製品を投入してくるのが2012年です。
ただし、いくつかの記事でも指摘されていますが、個人的にもこの「スマートテレビ」というものには懐疑的です。そこには、スペック重視のものづくりの匂いが見え隠れします。特に日本メーカーは地デジ特需×エコポイントというバブルから一転して3D対応機が予想以上に売れませんでした。そこで価格競争以外の差別化の手段として「スマートテレビ」という概念に頼らざるをえないという見方があります。実際「フィーチャーフォン」から「スマートフォン」への躍進と重ねているのであれば、かなり前提条件が違っています。なぜならフィーチャーフォンは"パーソナル"デバイスであり"アクティブ(能動的)"デバイスであるという点です。対してテレビは基本的にはリビングで"共有"するデバイスであり"パッシブ(受動的)"デバイスです。また、ケータイよりも買い替えサイクルも長く、現在はエコポイントのような補助も無いため買い替えは簡単には進まないでしょう。またケータイのように積極的に情報を探したりメールをやり取りするものではないので、スマートテレビが推すような能動的なアクションが必要とする機能をユーザーはそれほど魅力には思わないのではないでしょうか。また、ケータイとの違いでいうと、そういった先端的な端末や機能に食いつくようなイノベーター層はあまりテレビを観ないのではないかとも思います。
そしてもうひとつ大きな課題だと思われるのがその"操作性"です。実際にCESに出展していたようないつくもスマートテレビを試したわけではないのですが、様々なソースからも操作性の問題が指摘されています。Kinect的なジェスチャーを用いる例もあるみたいですが、なおさら今のマジョリティ層が使いこなせる操作性を実現するというのはいかにもハードルが高いように思えます。
大きな流れを決めるのはやはりApple
そういった理由から、スマートテレビという"概念"は話題になる割には普及は進まないのではないかと思います。ただし、光明があるとすれば噂の絶えないAppleの"iTV"でしょう。このサービスが革新的な操作性や、itunesとの連携によって我々の予想を上回るような完成度で市場に提供され、大きく販売数を伸ばすことになれば、ネット業界を含む業界的機運として、そして実際のユーザー体験としても"スマートテレビは面白い"ということになり、大きく市場が動くかもしれません。また、唯一Appleと同様な動きができるとしたらGoogleではなくSamsungも見逃せません。彼らは世界で1秒に2台テレビを売る6年連続のNo.1のテレビメーカーであり、かつそのテレビの優れた操作性を実現する可能性を秘めたスマートフォン端末を2011年には6000万台売っています。
日本とは違うUSのテレビ事情
一方で、USに関しては多少なりとも事情が違うようです。例えばスマートテレビにおける"番組検索機能"はケーブルテレビなどで多チャンネルが当たり前のUSでは明らかにユーザーメリットがある機能です。ここへhuluやyoutubeなどの"Webコンテンツ"をインクルードして観せることは操作性は犠牲にしても良いユーザー体験を生むでしょう。さらに肝心なコンテンツレイヤーを取り巻く制作/配信環境も日本に比べて構造的にオープンであるため、huluやNetflixなどの台頭によりデバイスとしてのテレビでインターネットを経由して好きなコンテンツを見るという視聴スタイルは、既に普及しつつあるようです。また、アメリカ人は実に、1日平均5時間もテレビを見ているというデータもあるぐらいで、テレビへの依存度に関しても大きな違いがありますね。
《2013〜2015年》
ひとつの方向性として、このままスマートフォンが圧倒的に進化をすればテレビはモニターにすぎない世界になる、という絵は大いにありえると思います。コンテンツのダウンロードや検索、番組表からそこにひもづくマイ番組データベースまで、すべてスマートフォンで完結する世界です。能動的なアクションは手元のスマートフォンで、スマートフォンがリモコンとなり操作の結果がテレビという単なる大型液晶デバイスに流れるという具合に。前述の通り、それぞれのスマートテレビの完成度は議論の余地がありますが、少なくとも普及には時間がかかると思います。そんな中で、爆発的に増え続けデバイスのみならずアプリケーションも含めて進化するスマートフォンである程度のことは実現できてしまうのではないでしょうか。逆にスマートフォンでできないことといえば、ポケットからはみ出してリビングを独占するような画面サイズという物理的な課題ぐらいです。先に触れたAppleやSamsungがそういった世界を志向すれば、全体の流れとしても間違いないものになるでしょう。
コンテンツレイヤー
《2012年》
テレビ離れは徐々にではありますが確実に進んでいますね。人気ドラマの視聴率からも分かる通り、圧倒的なリーチ数と電波という既得権に頼ったビジネスモデルは徐々にではありますがほころびはじめています。例えばフジテレビは本業以外の映画事業やイベント事業、テレビ朝日はケツメイシなどのアーティスト事業など、全体としては好業績をあげる局もありますが、本業の放送事業においては依然として厳しいコスト削減などの"経営努力"が続いていきそうです。そういう訳で、制作サイドは少なくなった予算の中でありとあらゆる工夫によってなんとか数字を出せる番組作りに四苦八苦しているようですね。ただ、2011年は様々な"バトン"を受け継いだ形でドラマ「家政婦のミタ」が40%の視聴率を超えるなど明るい話題もあり、しっかりと良い番組を作り、それが時流に乗ればまだまだ数字が取れるという機運のもと、厳しい制約条件の中で意欲的な番組作りに期待が持てる年だと思います。そういった点からも、番組作りへのインターネットやソーシャルメディアの活用が一気に進む年だと考えられます(期待も込めて)。未だに生放送のリクエスト受付が電話とFAXだけというレガシーな番組が散見されますが、今年はもっとネットを活用したインタラクティブな番組がいくつか登場するでしょう。
この文脈においてはNHKが積極的に展開し始めており、ケータイ大喜利はもちろん、「NEWS WEB 24」という番組では津田大介さんとともに視聴者のつぶやき(Twitter)が積極的に画面に活用されたり、クドカン演出の"「眠いいね!」ボタンが押されまくったら放送終了"といった新しい取り組みなどが行われています(詳しくは境治さんのブログをご参照「NHKがどんどんソーシャル化している件について」)。インターネットをどのように活用すべきか
ただし、番組づくりにおいてインターネットやソーシャルメディアを活用するにしても限界があり、もちろんすべての番組がインタラクティブな何かになるわけではありません。従って、他方で番組づくり自体ではなく、番組のプロモーションやテレビの"リアルタイム視聴"を面白くする取り組みにさらに注目が集まると思います。前者は主にFacebookなどのソーシャルメディアや"セカンドスクリーン"としてのスマートフォンを用いたプロモーション。ただしこれは実際の視聴率にインパクトを与えるほどの効果はまだまだ難しいと思われるので、"何を目的とするか"で全体感としては大きく異なってくると思います。また、後者は「バルスの一件」やみるぞう、tuneTVなどのソーシャル視聴体験をエンパワーするサービスによってある一定の注目はあつまり、特定の番組と連動する形で様々な実験的な取り組みが実施されると思います。こちらも何か視聴率にインパクトを残すというよりは、新たな視聴スタイルの提示と、それによってやっぱりテレビって面白いという機運のきっかけにはなるのではないかと思います。
オンデマンド配信における根深い問題
オンデマンド配信に関してはフジテレビが黒字化を発表するなど予想を超える伸びを示しており、既存コンテンツのアーカイブという資産を生かして今まで以上に積極的にインターネットを活用する動きが出てくると思います。特にスマートフォンの普及とLTEによる高速化、動画コンテンツを大量に消費する若年層ユーザーの増加を背景にモバイルでの動画配信も一気に伸びる年となると思います(ドコモの通信障害など不安要素はあります)。ただし、津田さんのつぶやきにあったのですが、日本の権利処理という構造的な問題を考えると超えるべきハードルはまだまだありそうですね。
ところでNHKには65万くらいの番組アーカイブがあって、NHKアーカイブスで権利処理が終わったものを流しているそうなんですが、権利処理舞台の人が毎日権利処理だけしっかりやっても今公開できているのは6500本ぐらいで6年やっても全部の1%しかできていないそうです。
そんな中で、電通取りまとめのもと「もっとTV」という民放連合VOD(Video On Demand)のサービスが今年4月にスタートします。観ているテレビ番組に関連したコンテンツを表示させるなど、サービス自体はユーザー目線で良いと思う部分もあるのですが、コンテンツ→ハードと複数のレイヤーへまたがるサービスであり、結局はデバイスの普及に依存するため浮上するにはかなり時間がかかるものと思われます。ここはデバイスに依存しないアプリケーションレイヤーが同様なコンセプトのアグリゲーションサービスを提供すればそちらに軍配があがるのではないかと単純に思ってしまいますね。デバイスに依存せず、プラットフォーム上の"モジュール"としてのポジショニングが早期のサービス普及への肝だと思います。ちなみに、4月2日にサービス開始予定ですが、対応スマートテレビは現在発表されていません。
《2013〜2015年》
2015年になっても、きっとテレビはテレビであり続けると思います。依然として世論形成から友達や家族間での共通の話題、社会へのトレンド発信においては大きな影響を持ち続けるでしょう。ただし、この2013〜2015年というスパンにおいてはテレビというデバイス自体も進化し、何より手元にあるモバイル端末が高速通信や様々な技術革新によって大きな進化を遂げます。テレビ(スマートテレビ?)とモバイル(スマートフォン?)の連携は一層強化され、このテレビ⇔モバイルのコンテクストに合った番組制作やプロモーション、視聴体験が確立されていくものと思います。具体的には番組にインタラクティブに参加できる仕掛けや、番組に関するありとあらゆる情報がモバイルと完全連動で簡単に引き出せたりそこからコンテンツ課金や物販へのアクション、ソーシャルなつながりによるユーザーが共鳴し合う仕掛け作りなどです。こういった未来予想図は昔からありましたが、これがモバイル主導、モバイル連携の形で進んでいくのではないでしょうか。
アプリケーションレイヤー
《2012年》
アプリケーションレイヤーは特に海外はGetGlueやhulu、Zeeboxなどありとあらゆる形で「×テレビ」に取り組むサービスが台頭しています。それらサービスに関してはこちらのブログに良くまとまっているのでこちらをご参照を。また、ひとくちにアプリケーションと言っても「×テレビ」に関しては様々な切り口が考えられるので、先のブログを参考に以下の4つぐらいに分類しておきましょう。
上記海外のサービス事例と比較すると、オンデマンドのコンテンツオープン性や番組表のAPI公開などなど、特にサードパーティがサービスを提供する環境としてはどのカテゴリに関しても十分ではないのが今の日本市場の現状です。本当の意味でユーザーにとってメリットのあるサービスを提供するためにはコンテンツホルダーとの連携が鍵になってくるのですが、ここが現状では閉鎖的かつ法律的な問題も含めると前に進みづらく、逆にテレビ局連合のサービスは各局の都合を考慮した上でユーザーにとっては中途半端なサービスになる可能性が高く、引き続きサードパーティーにとってもテレビ業界にとってもジレンマに悩まされる年となる可能性が高いです。
注目の視聴体験"テレプレゼンス"
そんな中で、個人的にも注目しているのが「テレプレゼンス」という概念です。Techwaveの湯川さんもこちらのエントリーで言及しているのですが、もともとは遠隔地との会議システムを指すことが多かったようですが、ここではインターネットを活用して遠く離れた場所でも同じコンテンツをリアルタイムにインタラクティブに一緒に楽しむというコンテンツの消費スタイル指すことにします。このテレプレゼンスを、Facebookが先導する形でユーザー体験として普及していくのが2012年だと思います。日本でも、このテレプレゼンスの台頭を象徴する事件が2011年の「バルスの一件」であり、震災後の計画停電における「ヤシマ作戦」だと思います。これら2つは極端な例ですが、不特定多数の人とリアルタイムにコンテキストを共有しつつ、「せーのっ」でアクションを起こすことから得られる何とも言えない連帯感はコンテンツ消費におけるニュータイプ的な価値だと言えるでしょう。これを日常的に演出できるのはFacebookを介した音楽や動画よはもちろんですが、最も適したメディアがテレビですね。このテレビに対するテレプレゼンスは「バルスの一件」からも分かる通り、サードパーティ単独でも十分演出できる世界です。こういったサービスが日本のテレビ業界のネット推進を大きく動かすきっかけになればと思います。
《2013〜2015年》
このスパンでは、テレビとユーザーを密接につなぐプラットフォームとなりうるサービスが台頭するでしょう。それは結局facebookかもしれないし、mixiかもしれないし、もしくはまだ見ぬサードバーティのサービスかもしれません。同様なアプローチはテレビ局単位、もしくはテレビ局連合で展開する可能性もありますが、先に述べた通りこのスキームは結局中途半端なサービスで終わる可能性が高いため、第三者のイノベーティブなサービスが大きくテレビ視聴+セカンドスクリーンユーザーを抱えることになると思います。これはテレビ局側にとっては決して悪いだけの話ではなく、こういったテレビと視聴者をつなぐプラットフォームの台頭によってテレビ視聴者の減少に多少なりとも歯止めがかかり、テレビのマスコンテンツ力とインターネット/ソーシャルウェブによるテレプレゼンスの確立やVOD、その他番組情報の連携によりニュータイプ的な"新しいテレビ視聴体験"が何らかの形で確立されていくのではないでしょうか。個人的にはZeeboxのようなサービスの進化系が理想な形のように思えます。番組の編成権は圧倒的に視聴者へ移りますが、よりテレビ局側の番組制作力、トータルサービス力がブラッシュアップされていく世界が望まれます。
プラットフォームレイヤー
最後に、プラットフォームレイヤーに関しては深い考察を省きます。前述までの3つのレイヤーの考察を踏まえれば、Apple、Googleが妥当でしょうか。次点としてSamsung, Facebookあたりも見逃せませんね。と、日本のプレイヤーがいないことを寂しく思いますが。
以上、テレビ業界知識が少ないなりにだらだらとまとめてみましたが、忌憚なきご意見お待ちしております。
大学生時代、ビジネス書や自己啓発本を読みあさっている時期がありました。「戦略プロフェッショナル」からはじまる三枝三部作やジャックウェルチの「ウィニング」など、今の仕事に生きている様々な名著との出会いがありましたが、その中でもダントツで未だに役に立っているのがD・カーネギーの「人を動かす」です。刊行されたのは1936年とのことなのである意味かなりの古典ではあるのですが、いわゆる「人と人の関わり」に関する普遍的で本質的なポイントをまとめているので、恐らく今後何年経っても色褪せることは無いでしょう。いかにして人を動かしたり、人を説得するか。仕事をする上で、人をマネージする上では避けて通れない最重要な課題に対して豊富な逸話を交えて紹介しています。
久しぶりに本書を読み返していたら、この「人を動かす」に出てくる様々な知見はマネジメントだけでなく"ものづくり"、もっと言うと"ソーシャルサービスデザイン"にも通じる話が多いなぁと思いました。もちろんいつの時代も我々作り手はそれを使う「人」を中心にサービスをデザインしなければならないのですが、特にソーシャルサービスにおいては単一の「人」ではなく、「人」と「人」の有機的なつながりをデザインすることが最も大事な要素であると思います。そこで、本書よりソーシャルサービスデザインに役立つ"重要感"というエッセンスをピックアップしたいと思います。
簡単に相手に重要感を持たせる「like」という仕組み
人を動かす秘訣はこの世にただ一つしかないとカーネギーは本書で断言しています。それは
「自ら動きたくなる気持ちを起こさせる事」
自ら動いてもらうためには、相手のほしがっているものを与えるのが唯一の方法。では人はなにを欲しがっているのでしょうか。偉大な心理学者フロイトによると、人間のあらゆる行動はふたつの動機から発します。
また、本書ではこれをもっと広域に考え、人間が欲しがるものを大きく8つに分類しています。
ここでポイントなのは、これらはたいてい満たすことができるものです。ただし、ひとつだけ例外があります。それは、食欲や睡眠欲同様になかなか根強く、しかもめったに満たされることがないもの、つまり8番目の「自己の重要感」です。
ここに今既にプラットフォームとなっているソーシャルサービスの肝があります。それはTwitterの「Retweet」であり、Facebookの「like」。それは、どんな些細な内容に対する「Retweet」や「like」でもOKなのですが、自らのアクションに対する、自分の関わりのある「人」から直接的に「Retweet」「like」というフィードバックを受けることは「自己の重要感」を満たすことに他なりませんね。このアクションに対するリアクションのループを上手くデザインすることが、ハマるソーシャルサービスにおいて重要であることがわかると思います。ちなみに、この自己の重要感に対する欲求は、人間を動物から区別している主たる人間の特性だそうです。面白いですね。
Instagramに見る階層式重要感
Instagramの初期の成功を見ても、初期にあのサービスをドライブさせたのは「like」の仕組みはもちろん、「popular」の機能によって一部のヘビーユーザーの"重要感"を満たし、刺激し続けたのも大きな要因だと思います。かくいう私もInstagramリリース初期はまだ簡単に"popular入り"できたので、必死に良い写真を投稿し続けたものでした。人は慣れてしまうものなので、同じレベルで重要感を満たされ続けると最初のような満足感は無くなってしまいます。なので重要感も段階的に満たされるようにデザインされていると良いでしょう。Instagramでいうと
写真を投稿する→「like」がもらえて嬉しい→また投稿する→しばらくすると「popular」に掲載され桁違いに「like」がつく→調子に乗ってヘビーに写真を投稿しまくる...
という抜け出せないアクション&リアクションループがありました。そう考えると、ソーシャルゲームは実に良くデザインされていますね。そこが課金に結びつくのですから、本当に恐ろしいものです。。
他にも本書にはソーシャルサービスデザインに活きる人を動かす原理原則が詰まっています。まだ読んだことが無い人も、過去に読んだことがある人も、一度ものづくりの視点で読んでみると面白いと思います。
Pinterest、話題ですね。
ある程度やってみましたが、だんだん楽しくなってきました。だらだら眺めるよりもPinしてコレクションしてくほうが私には性に合っている気がします。さて、このPinterestを楽しみながら、ふと最近テレビ絡みの仕事をしながら考えていた"編集権の移行"という点でシンクロしたので、なんとなく考えていることを書いてみました。結果、佐々木俊尚さんの言う「キュレーション」的な話であり、業界人にとってはある種当たり前の話なんですが、あくまで頭の整理として。
Contents is King
時代は移り変わる。万物は流転する。メディアのあり方も変わる。
メディアという切り口で歴史をひもとくと、紙という物理レイヤーに対してサービスレイヤーの新聞・雑誌があり、電波という物理レイヤーに対してサービスレイヤーのテレビ・ラジオがあり、そして今インターネットという物理レイヤーにおいては多種多様なサービスが登場しています。ただし、時代や技術が変わろうとも、変わらない概念として存在し続けるのが「Contents is King」ということ。それが文章なのか、写真なのか、音楽なのか、映像なのか、それは様々ですが、この概念はある程度普遍的なものであると思います。例えば今、テレビの凋落が叫ばれていますが、テレビ局の持つ電波という既得権によって作り上げた垂直統合のコンテンツ制作、共有能力(特に日本の場合)は、一般な消費者にとってはまだまだ強力なContents Generatorであり続けると思います。ただ、時代は変わっても、技術は進化しても人々はContentsを消費し、そこから発生する人と人とのコミュニケーションが人の営みのベースを形づくっていきます。紙や電波やネットというのは単なる技術でありツールであって、本質的な問いは「どんなコンテンツを誰に?」です。ただし、インターネットという革新的な技術とソーシャルメディアの台頭によってその"流通"に関して大きな変化が起こっています。
Contentsが人を介して伝播する
「Contents is King」という普遍的な概念に対して、インターネットの登場とソーシャルメディアの台頭によってContentsの流通のあり方は大きく変わりつつあります。例えばこちらの動画。強力なContents Generatorであるテレビ番組のワンコーナー。
今年の1月2日放送の大型特番だったにも関わらず、番組自体の視聴率はふるわなかったみたいですね。しかし実際に観てみると面白い。面白いから誰かに共有したくなります。共有すると様々なリアクションが返ってきて、口コミでさらに広がっていきます。今、この文脈が成り立っているのは、この動画がContentsとして有意義なものだからであり、かつfacebookやtwitterといった人を介してContentsが伝播するインターネット上のプラットフォームがあるからです。実際、このyoutubeに上げられた動画だけでも現在約800,000回再生されています。海外でも話題になっているみたいですね。すべてユニークカウントとして、テレビの視聴率1%で約18万人が視聴していることを考えると、インターネットとソーシャルメディアによって約4.5%の視聴率が後から積上った計算になります。今までであれば共通のインフラ=メディア(媒介)に乗って一義的な文脈をもってユーザーにリーチできていたものが、インターネットというインフラによって媒介がそれぞれの文脈を伴った個人へと移り変わっていきます。つまり、良いコンテンツは伝播する。そして、それはより人(=インターネット)を介して広がっていくようになります。もちろん逆もしかりです。そうすると、「Contents is King」という概念は変わらなくとも、その流通に関して「個人」が大きな力を持つようになります。
編成権はより"身近な個人"へ
その結果何が起こるかというと、「Contents」を良い悪いと評価するのがより「個人」に紐づいたものになり、一義的なの文脈ではなくそれぞれの価値観や趣味趣向に沿った文脈を持った形で伝播していきます。それも、今までのような口コミサイトのような結果民主主義的なものではなく(もちろん直近のステマ騒動で明らかになった構造的な問題もふまえて)より自分も含めた身近な人が「Contents」の媒介者となり、自己の価値判断によって「Contents」は流通していくでしょう。こういった変化によって、マスメディアを例にとるとContentsとユーザーの間に位置した"編成"という部分はよりユーザーである個人に移っていきます。こういった"個人への編成権の移行"は、もちろん既に様々なサービスによって浮き彫りになってきています。
Contents編成権の移行を象徴するサービス
■TV Guide
マスメディアであるテレビにおいてものすごい分かりやすい例でいうとUSのTV Guide.com。ご存知テレビをベースとした情報紙であり情報サイトですが、今力を入れているのがモバイルデバイスを活用したソーシャル視聴体験。Webサイトはもちろん、モバイル専用アプリは500万ダウンロードを突破し、中でも特徴的なのが「Watchlist」という機能。特定の番組やタレント名で検索ができたり、お気に入りの番組を登録してそのリストをソーシャルに共有できます。パーソナルでソーシャルな新しい形のテレビ番組表ですね。こういったアプローチはテレビ側の編成権がインターネットとソーシャルの概念によって個人へ移行していくという分かりやすい例だと思います。自分と趣味趣向が合う友達の番組表はきっと参考になるでしょう。そして同じContentsを共有することによってコミュニケーションが生まれます(本当はここが大事で、Contents is KingよりもCommunication is Kingだと思うのですが)。この辺を詳しく観たい人は昨年のMashable Media SummitでのTV GuideバイスプレジデントChristy Tannerのプレゼンは必見です。ただし、テレビに関しては「テレプレゼンス」という新しい概念の視聴スタイルによって、テレビ局が編成する番組を様々な形で(主にセカンドスクリーンになるとは思うのですが)リアルタイムでみんなで楽しむという形が台頭してくると思っています。こちらに関してはまた別の機会にブログに書きます。
■GetGlue
ご存知の方も多いと思うので説明を省きますが、現在月間のチェックイン数は2000万。月に2000万回、ユーザーがGetGlueを使って自分の趣味趣向をアピールしていることとなります、これは本当にすごいことです。それらの多くはソーシャルネットワークを使って伝播され、都度周りのユーザーへのContents消費に影響を与えています。最近$12Mのファンディングにも成功し、今年を振り返った時に最もブレイクしたサービスになるんではないかと思います。
ホットな所でいうとPinterestですね。これは雑誌の代替に近いとも思います。前述のサービス同様、趣味趣向がはっきりしている人向けですが、だらだら眺めているだけでも楽しいし、UIが非常に良くできてますね。また、キュレーションする側は「like」「follow」といった定番のモチベーションインセンティブループによって固められているため、いわゆるハマる仕掛けが良くできていると思います。本サービスがブレイクによって写真や動画といったContentsはさらに人をベースに伝播されていくことでしょう。
もちろん、他にも色々ありますが、長くなるので割愛。
インタレストグラフ再考
「Contents」はそれを摂取する人の趣味趣向を反映します。それがマスメディアによる一方的な発信から、より自己の判断によって人をベースとした流通によってその傾向はより顕著になって行くでしょう。インターネットとソーシャルメディアによって人を介してContentsが流通すると膨大な興味関心による人のつながり、ご存知「インタレストグラフ」が形成されます。この興味関心にひもづくインタレストグラフと、従来のソーシャルグラフという概念の決定的な違いのひとつであり、最も重要な違いは、それがビジネスに結びつきやすいか否かです。例えば旅行を軸としたインタレストグラフは旅行会社はのどから手がでるほど欲しい顧客データであり、流通プラットフォームでしょう。またTV Guideの例でいうと、前述したWatchlistの登録ユーザーは400万人だそうです。400万人の趣味趣向が反映された番組リストと、それぞれ人を軸とした流通プラットフォームを握っているわけです。既に60以上のスポンサーがついているのは当然といえば当然ですね。したがって、コンテンツレイヤー、Webサービスレイヤーにおいて上記文脈に沿ったものづくりというのが、あらためてものすごくビジネスチャンスだと思います。インタレストグラフという概念は昨年から盛り上がっていますが、より実サービスとしてビジネスになっていくのが今年になるのでしょうかね。色々頭をひねってみたいと思います。
私には毎週欠かさず観ているテレビ番組があ1つだけあります。「情熱大陸」と銘打ったその番組は毎週ありとあらゆる方面で特定の何かに情熱を傾ける1人の人物にフォーカスし、短いもので数ヶ月、長いものだと数年の密着取材を重ねてその人の人生を切り取り、ギュッと凝縮した30分にまとめあげます。私がこの番組が好きなのは、自分のリアルコミュニティの中では出会えるはずもない人たちの人生や考え方、そして仕事感に触れられるから。有名芸能人やアスリートから、獣医、ダンサー、登山家まで。そこから得られるモノは、仕事の対象は違えど目の前の仕事に生きる普遍的な教訓や発見も多いのです。
昨年も様々な人の人生の断片に情熱大陸を通じて触れましたが、中でも感銘を受けた人の中のひとりに山崎亮さんという方がいます。彼の職業は「コミュニティーデザイナー」。あまり聞き慣れない職種ですが、主にある問題や課題を抱える地域に対して、そこに住む人と人をつなげたり、コミュニーションが発生する仕掛けを用意するなど、"コミュニティ"をデザインすることによってその地域を活性化させるのがお仕事です。つまり公共空間や景観をデザインする「ランドスケープデザイン」が"ハード"のデザインだとすると、「コミュニティデザイン」はそのハードの上に乗る"ソフト"のデザイン。このハードではなくソフトをデザインする、そのソフトを何を軸にデザインするかというと、人を軸としたコミュニティをデザインするという考え方が、今のスタートアップに非常に重要な概念なのではないかと思うのです。特定のターゲットにフィットしたサービスをつくるだけではなく、どうやってそのサービスをユーザーが発見し、どうやってそのサービスをユーザーがリアル/Web上のコミュニティを通じて拡げていくか。それをソーシャルメディアやリアルコミュニティなど様々な手段を考慮しながら全体としては"人"を軸としてサービス全体をデザインする。また、特に人と人の交流をベースとしたコミュニケーションが軸のサービスであれば、ローンチ後にいかにコミュニティをベースに拡げていけるかがスケールのキモとなります。
そういった山崎さんのコミュニティデザインに関する事例がこちらの著書にまとまっていたので読んでみました。思った通り、特に"リーンスタートアップ"という概念にも通ずるものがこのコミュニティデザインにはありました。そこで、山崎さんのコミュニティデザイン事例から、リーンスタートアップにも通じる極意をまとめたいと思います。
有馬富士公園に学ぶ「キャスト」の役割
山崎さんが手がけた兵庫県の県立公園である有馬富士公園は2001年に開園し、年間40万人の来場者が5年後には70万人を超えるという脅威の結果を残しました。通常は開園時の入場者が最も多く、徐々に来園者は減っていくもの。これを実現したのがコミュニティデザインの概念でした。通常の公園にはその公園を管理運営する「管理者」がいて、その公園に遊びにくる「ゲスト」がいます。管理者はゲストに迷惑がかからないように花を植えたり芝生を刈ったり。ゲストは勝手に遊んで、勝手に帰るだけです。そこに山崎さんはディズニーランドの例に習って「キャスト」の概念を持ち込みました。つまり「管理者」と「ゲスト」の間に入って「ゲスト」を楽しませる存在のことです。ただし、県立公園なので「キャスト」に払う給料はありません。そこで考えたのがキャストも公園利用者で構成するというアイディア。実際その地域の約70以上の団体がその公園を利用することにより、その団体の活動を通じて人が集まる、集まった人がまた公園を利用し、それがまた人を呼び込むという好循環を作り出しました。また、それぞれの団体が「会議室の費用がかさむ」「活動に必要な道具を置く場所がない」といった課題と、公園のキャストが必要だけど給料を払って雇う事はできないという課題をうまくマッチさせている点も含めてコミュニティデザインの真骨頂と言えるでしょう。
コミュニティが生み出すサステナビリティ(持続可能性)
さて、この事例からスタートアップが学べることは何でしょうか。多くのスタートアップは既にある程度のローンチマーケティングの術を身につけているので、メディアへの露出やリリースイベントなど様々な手法によってリリース時に多くの注目を集め、初期にある程度のユーザー数を獲得することはできるでしょう。しかし、リリース時に記録したユーザー数の伸びは直ぐに落ち込み、新規ユーザー数が伸びないどころか日々アクティブユーザー数も減っていくというのが多くのサービスにおけるその後の一般的な道筋と言えるのではないでしょうか。有馬富士公演の事例では、開園後来場者数は伸び続けています。これは「キャスト」の存在に注目し、様々なキャストが独自なコミュニティを形成して場(サービス)を盛り上げ、コミュニティベースで常に人が行き来する仕組みを作りあげたからです。また、その「キャスト」の設置に関しては地域の団体に着目し、彼らの課題をヒヤリングすることによって自社サービスである公園で解決できる課題とフィットさせています。したがって、自社サービスで解決できる課題は何か、そのサービスで解決する対象は誰か、その対象がどういったコミュニティを形成し、サステナビリティ(持続可能性)を持った仕組みを提供できるか、といった問いかけが重要となります。また、スタートアップにおいて「キャスト」という概念は、例えばFoursquareでいうボランティア的に機能するスーパーユーザー、Twitterでいうセレブや有名人ユーザー、または"エバンジェリストユーザー"的にサービスをかなりアクティブに使い、周辺のコミュニティを巻き込めるようなユーザーと置き換えることができますね。これはシンプルに言えば、ユーザーがユーザーを呼ぶ仕組みとも言えるでしょう。場を作り、コミュニティをデザインすることによってそのコミュニティが人を呼び、サービスを活性化し続けるようなプラットフォームとしてのグラウンドデザインです。
どう使われるかをデザインする
有馬富士公園に子供の遊び場をつくることを依頼された山崎さん。公園をつくる際に出た土砂置き場を子供の遊び場にする、という決められた制約条件の中でとった手法は「参加型のデザイン」でした。2回のワークショップを実施し、約200名の小学生とともに様々な遊び場をつくってみてそのワークショップの一部始終を記録、子供たちが目を輝かせているものはどんな時間や空間なのか、仲間と一緒にどんな遊びを生み出すのかなどを読み取って、それをベースにデザインしたそうです。これはピボットのプロセスに近いかもしれませんが、こちら側が想定していた通りにユーザーが行動してくれるとは限りません。むしろ想定外の使い方でも使われないよりはマシなのですが、そういう前提のもとで大枠のターゲットとコンセプトを決めつつ、その中で実際どのように使われるのか、どういうコミュニティがつくられたり、どういうコミュニティにフィットするサービスなのか。そしてそのフィードバックをベースにサービスをデザインしていくというのは今のものづくりのプロセスにおいて大事な要素だと思います。α版、β版としてサービスをリリースし、クローズドな状態でサービスをブラッシュアップさせていく過程にも通じるものがありますね。あくまでそれを使うユーザーがベース。その上で明確なコンセプトを持ちつつも、実際どう使われるかでサービスをアジャストする。これがコミュニティデザインを前提としたものづくりの形なんだと思います。
まとめ
山崎さんは元々ランドスケープデザイナーであり、公共空間や公園をデザインしていく過程で、ものをつくるだけでは解決できない何かがあることに気づきました。それがものというハードではなくコミュニティというソフトのデザインによって解決できることを発見したのです。上記の事例からも分かる通り、場を用意するだけでは駄目で、そこにいかにコミュニティを作り出す、もしくは巻き込むか。インターネットはデジタルに情報を受信、発信していた時代から、人と人をベースとしたソーシャルに情報が流れてく時代だからこそ、人を軸としたコミュニティをデザインするという概念がより大事になるのだと思います。もちろん今までのサービスがそういったコミュニティを全く意識せずつくられて来たわけではありません。しかし、Webの構造がよりソーシャルになり、サービスが増え続けてそれぞれのレベルが高くなっていっているからこそ、ものをつくる側は、よりものづくりにおいて"コミュニティをデザイン"するということも考慮しないとこれからの問題は解決できないということになるのではないでしょうか。
まとめると、今という時代はWebのソーシャル化によって、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアをツールとしてうまく活用しながら、リアル世界のコミュニティデザインのように、Webサービスもハードのデザインとコミュニティデザインとをセットで考えるというのが肝心ということです。
最後に、時間のある方はYouTuneに山崎さんの回がUPされてますので、是非ご覧ください。
2012年最初のエントリー。どんな内容を書こうか色々考えたのですが、2011年のあの出来事も踏まえて、この偉大な起業家に関するエントリーからこの2012年をスタートさせたいと思う。
プレゼン術、交渉力やリーダーシップにライフスタイルなど彼から学ぶべきことは多いですが、そんな彼の中でも何より力強く、これだけの人を惹き付け、素晴らしい製品を生み続けたコアとなっているのが"ものづくり"における哲学であると思います。
私自身、小さい頃から日本の"自動車"におけるものづくりの姿勢に憧れ、様々な夢を描き、誇りを持ってきました。大学院まで続けた自動車に対するものづくりの探求は、今はインターネットという新しい産業におけるソフトウェアというものに形は変えましたが、根っこにある想いは変わりません。ドラえもんの如く、「こんあものがあったらいいな」と思い描いたものを実際に形にする。そしてそれがたくさんの人々の生活を変え、人生を豊かにし、笑顔を作っていく。これがものづくりの醍醐味だと思います。
そんな私のものづくりの姿勢に、自動車からインターネットというフィールドに移って最も影響を受けたのが他ならぬ"Steve Jobs"でした。その明快で折れない彼のものづくりに対する哲学は、日本のメーカー各社に爪の垢を煎じて飲ませたいと思うぐらいガツンと響きました。彼が自動車を"デザイン"したらどんなものになるのか、もはや叶わぬ願いとなってしまいましたが今でも心が躍ります。今 、Jobsに関しては本当に多くの本が書店に並んでいますね。私も彼に関する本から一番多くの学びを得たと思います。そういった時々で学びがあったものは、断片的に思い出してはまた違うところでこんな学びもあったな、というのを繰り返していたので本エントリーは彼から学んだ"ものづくり哲学"をいつでも立ち返れる場所にしたいと思います。
1.ものづくりとは"ものがたり"をつくること
「我々が作っているのはコンピューターではなく、"体験"である」
Jobsのものづくりの対象は"製品"ではない。"製品"は人々のライフスタイルを革新的に変えるような手段でしかなく、ものづくりにおいてフォーカスすべきなのは「どのような"体験"を創るか」ということ。その中心には必ず"人"がいる。ものづくりの対象は製品でも技術でもなく"人"そのもの。その人の日々の生活をどのようにして変えていくのかというストーリーを彼は創っている。
2.集中と簡潔
Jobsは一度、Appleを追放されます。復帰後の彼の仕事に、Jobsの"ものづくりプロセス"におけるエッセンスが詰まっています。彼が行ったのはシンプルだけど、勇気のいる決断。
後にこの決断に関して、インタビューでJobsはこう答えています。
「そのすべてがシンプルであるべきだ。集中と簡潔が私のモットー」
Jobsはいつでも何かに集中しようと考える。複雑さを極力排除し、簡潔さを心がける。このモットーを実際に製品に落とし込む際には、次の2つが大事なポイントとなる。
彼は技術のための技術には興味がなく、機能の詰め込みは絶対にしない。逆にユーザーの立場から設計し、できるだけシンプルで使いやすくなるまで複雑さを切り詰める。彼にとって最も重要な決定は次の一言に集約されまる。
「決断の上で大事なのは、何をするかではなく、何をしないかだ」
Appleとして、フォーカス範囲外の製品やビジネスは絶対にやりません。たとえ市場としてのポテンシャルがあっても。強みがいきないものは断固やらないと判断、Jobsはグッとこらえます。それぞれの判断が正しかったことは歴史が証明していますね。また、Appleは最大数のマシンではなく、最も収益性の高いセグメントを追求します。これもJobs Focusのひとつ。これらを象徴するような彼の有名な言葉、はとても重く、そして深い。
「私は自分たちが手がけなかった製品も、手がけた製品と同じくらい誇りに思っている」
3.デザインとは機能である
デザインとは装飾でも製品の見た目でもない。
「デザインとは"機能"である」
製品がいかに機能するかは、デザインの段階で見極めないといけない。それが何かをデザインするためには、それを理解しなければならない。したがって、ものづくりのプロセスにおいて先ずはそれを良く理解することが大事だと常にJobsは言う。
「いいデザインをしようと思えば、先ず真に理解する必要がある。それが何なのか、心でつかむ必要があるんだ」
また、アップルの製品はシンプルに見えるが、それはある意味正しく、ある意味正しくない。Jobsの復帰以来Appleの主要製品のデザインを統括してきたジョナサン・アイブの言葉。
「信じられないほど複雑な問題を解き明かして、これのどれが難しかったんだと思わせるほど。その解決策を当り前でシンプルに見せることがAppleにおけるデザイン」
このシンプルに行きつく過程ではうんざりするほどのプロトタイプを作っては後戻りの繰り返し。ただ、このやり方が最も健全であり、これが製品を"デザインする"ということ。
4.安住しない。常にイノベーション。
Jobsにとってイノベーションとは創造性のこと。そして、独創的な方法で物事を組み合わせること。
「この業界の人間はあまり多様な経験をしていない。だからつなぎ合わせる点の数が足らず、問題に対する幅広い視野が欠けた直線的な解決策に終わる」
Jobsはデザイン、建築、技術にいつも熱心に取り組み勉強を怠たらず、駐車場を狂ったように走り回ってメルセデスのデザインを注意深く観察したりなどもしばしば。
「レオナルド・ダ・ヴィンチは偉大な芸術家、偉大な科学者だった」
例えばJobsは、iPodの中で一番の売れ筋だった時期に「mini」の生産を打ち切り、より薄型の後継モデル「nano」の開発を開始する。
「普通の人なら、あとは安全にやろうとなる。だがこれが僕らにとっては大きな落とし穴だ。僕らはもっと大胆にチャレンジし続けなければならない」
普通の精神ならこういった決断は中々できない。心の奥底にわき上がる欲求を、Jobsは包み隠さず前進し続けます。そういった覚悟に対する姿勢は、次の言葉に深い学びがあります。
「あともどりできない状況に自分を追い込むんだ、そうしたら後はやるしか無い。何かを捨てないと前には進めない」
5.Think different
最後に。これはもう、言葉がいりませんね。
クレージーな人たちがいる
反逆者、厄介者と呼ばれる人たち
四角い穴に 丸い杭を打ちこむように
物事をまるで違う目で見る人たち
彼らは規則を嫌う 彼らは現状を肯定しない
彼らの言葉に心をうたれる人がいる
反対する人も 賞賛する人も けなす人もいる
しかし 彼らを無視することは誰もできない
なぜなら、彼らは物事を変えたからだ
彼らは人間を前進させた
彼らはクレージーと言われるが 私たちは天才だと思う
自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが
本当に世界を変えているのだから
もうすぐ2011年にも幕。
今年大きくブレイクし、新たなプラットフォームとしての地位を確立したサービスと言えば、写真共有のInstagramとローカルチェックインのFoursquareではないでしょうか。Instagramは昨年リリース、Foursquareは2009年の6月に正式公開してますが、ともに今年の9月と6月に1000万ユーザーを突破するという大きなティッピングポイントを迎え、APIの公開も相まってどちらもプラットフォームとして大きく飛躍しました。また、2011年を振り返って、ベストスマートフォンアプリを選ぶとしても個人的にはこの2つです。
InstagramとFoursquareはなぜここまで成功できたのか。それぞれの成功の要因を5つのキーワードでまとめたいと思います。2011年のバズワード的なキーワードもありますが、本質的には2012年と言わず普遍的に大事な成功則だと思います。
Pivot
InstagramはもともとBurbnという総合的なソーシャルチェックインのアプリだったことはもはや有名ですね。彼らはそのサービスをリリース後、「どう使ってもらいたいか」ではなく、「どのように使われているか」そして「実際どのような問題を我々のサービスは解決しているのか」に注目し、その結果「写真の共有」が最も利用されていたので、その1点に集中してサービスを方向転換(Pivot)させました。もちろんそれだけでなく、iPhone4登場による解像度向上による写真利用のニーズ拡大など大局の流れとのセットでPivotを決めています。なのでこういったユーザーベースのアプローチとマーケットベースのアプローチのバランス感覚がPivotを決める上で重要なんだと思います。今までPivotに失敗しているサービスや企業は、このどちらかが欠けていたり、バランスが悪かったりしたのが要因ではないでしょうか。
Focus
Instagramの事例では、上記Pivotにおいても軸となったのは集中(Focus)です。「Burbnのコアな機能をひとつだけ残せるとしたら、何を残すか」という軸のもと、総合的なサービスから「写真の共有」にFocusしました。またInstagramがこれだけ短期間にサービスを拡大できたのも、iOSというプラットフォームに絞ってサービスを改善してきた結果です。普通の考えだとAndroidなど他のプラットフォームにもサービスを拡げる形でユーザーベースの拡大をはかりがちですが、これは実事業者にしか理解しづらいことかもしれませんが、プラットフォームを増やして開発リソースを分担、もしくは組織を拡大して対応することは、結果として全体としての開発スピードやサービスクオリティを落とす事につながることが多いです。コミュニケーションの複雑化、多岐にわたるマネジメントの発生、マーケティングの分散と複雑化など、「拡大」におけるデメリットの落とし穴は数多く存在します。Instagramはこの事を認識した上で「拡大」への気持ちをぐっとこらえて少数精鋭でのiOSフォーカスを保ったのだと思います。
またFoursquareも競合のGowallaに比べて徹底的に「Check-in & reward」、つまりチェックインというアクションと、それに対してメイヤーという称号やバッヂなどのインセンティブを与えて動機づけるというアクションループの精度を高めることにひたすらFocusしてサービスを拡げてきました。どちらもしたたかだと思います。
Gamification
このキーワードも今年かなり耳にしたものですが、最も体現しているサービスはFoursquareですね。実際未だにヘビーユーザーとしてFoursquareでガンガンチェックインしてますが、Foursquareの場合はユーザーベースが拡大すればするほどハマっていく仕組みになっています。誰もが自分の好きな場所、好きなお店はあったりしますよね。そこでメイヤー(市長)になることは周りのユーザーが増えるほどメイヤーの優越感は増していきます。また、Foursquareでは相手との戦いだけではなく、自分のチェックインの可視化によって過去の自分とも対峙するので、ほんの少しでも向上心のある人なら過去の自分を越えようと思ってチェックインにいそしむでしょう。この「Gamification」という呼び方は最近もてはやされていますが、今後のサービス作りにおいてものすごく普遍的に大事な要素だと思います。特にスマートフォンアプリは日々増え続けて行く中で、我々が直面しているのは競合過多環境におけるユーザーの可処分時間の奪い合いです。その中で、今後より
①ソーシャルメディアを活用して定常的にバイラルを生み続ける仕組み
②ユーザーをアクティブ化させ続ける仕組み
という2つが大事だと思います。この2つを促進する上において、Gamificationという概念は外せない要素になるのではないかと思います。
Location
O2O(Online to Offline)という言葉も今年は良く耳にしましたが、ここで言いたいのは引き続きロケーションベースのサービスが流行る、そのオンラインの動きがリアルなビジネスと結びつくということではなく、そういったサービスがモバイル、スマートフォンによって拡大していくことは前提として、さらに"地の利"を意識することが大事ということです。Foursquareの最大のライバルは同次期に同じコンセプトでリリースされたGowallaでした。今月FacebookはGowallaの買収を発表し、この長い戦いにも終止符が打たれFoursquareの勝利がより明確になったワケですが、この戦いの勝因の大きなひとつがheadquraters、つまり本拠地です。ロケーションベースのサービスの鉄則は、先ず特定の地域やコミュニティにおいてマジョリティを取る事。逆にそうやってクリティカルマスを越えないとサービスの本質は発揮できません。Foursquareの本拠地はアメリカの中心地であるNewYork、GowallaはAustinでした。New Yorkは様々な会社や店が密集し、チェックインする場所に関しては事欠きません。また、その地に集まる人たちもまた、先進的なサービスに敏感で社交的な人たちです。どちらの拠点が有利かは自明ですね。
また、ここで「Location」を挙げたのはそれだけではありません。
Marketing/Design
これは非常に広い意味合いを持つ万能な言葉なのですが、特に重要だと思うのがサービスをユーザーに届ける活動全般、そしてサービスをブランディングし、収益化するための活動全般。そしてそれら全体を"デザイン"することです。Foursquareが地の利でGowallaに勝利したのは、単純にチェックイン対象のスポットが密集していたり、そういった先進的なサービスに敏感で社交的な人たちが集まっているからだけではありません。初期のFoursquareをドライブさせたのがBravo, Zagat, Showtime, MetromixなどのNew Yorkに本社を置くサービスとパートナーシップを組んだことだと言われています。こちらの「ニューヨークのスタートアップシーンが熱い理由」でも指摘しているような、いわゆる"New York Shift"の本質の部分が今後より大事になるのではないかと思います。つまり、テクノロジーをベースとした優れたものさえ作れば、ソーシャルメディア上で拡散し人々に広く受け入れられるようなある種"ラッキーパンチ"が打てるような時代は終わり、2012年以降は良いサービスをいかに各種のメディアやソーシャルサービス、他の企業との協業などを通じて拡げ、ブランディングし、かつその全体の文脈にあった絶妙なビジネスモデルを構築するなどの、総合的なサービスの"デザイン力"が競争力になっていくと思います。ありとあらゆる手を尽くして"勝つべくして勝つ"戦いをしなければ勝てない。だからこそより"Marketing""Design"という概念が大事になると思います。だからこそそこにアクセスしやすい"location"が大事だと思います。最近は日本でも地方でのスタートアップシーンが盛り上がっていたり、盛り上げようという動きがありそれはそれで良いと思うのですが、特に"Marketing"という"Technology"に比べると人と人のつながりにも依存度の高い要素を考えると「東京」で事業を行うほうが断然有利だと思います。
来年はどんな年になるのでしょうか。本当に楽しみです。「ニューヨークのスタートアップシーンが熱い理由」にあった下記の言葉を、噛み締めるような年になるのではないかと思います。
デザイン、賢明な新しいビジネスモデル、そして、配信の経験がテクノロジーと同じぐらい重要視される段階に達しているため、東海岸のテックシーンは盛り上がっている。新しい東海岸で成長する企業は、西海岸が過去10年で作り上げたテクノロジープラットフォーム、アマゾン等の使い方が簡単なインフラ、グーグル等の発見ツール、そして、フェイスブックのソーシャルグラフに依存している。エッツィ、グルーポン、そして、ギルトグループ等の企業はテクノロジー系企業と考えられているかもしれないが、実はテクノロジーを基に作られた賢く、新しい革新的な企業である。才能豊かなデザイナー、マーケッター、そして、実業家がニューヨークに集まっているため、この傾向は今後も続くのではないだろうか。